AV-436 CD/朗読 向田邦子作品集

30,800 円(税込)

どこにでもある、どこか懐かしい日常生活を織り成すさまざまな人々の、それぞれの心に温かい、しかし執拗な光を投げかけて「心のひだ」を描き続けた作家・向田邦子。
その切り口の鮮明さ、人間や出来事を見つめる視点の独創性の高い向田の傑作を、女優・岸田今日子の情感溢れる朗読で聴かせるCD作品集だ。
直木賞受賞作の「思い出のトランプ」短編13作品をはじめ、遺作の「男どき女どき」まで、本やテレビドラマで見るものとは全く異なる、向田邦子の世界が眼前に彷彿とする時間が楽しめる。



【1】『隣りの女』(上)(収録時間:約46分)
あの井原西鶴の「好色五人女」を現代に置き換えて、普通の主婦の性(さが)や恋を描いた短編の傑作。2DKのつましいアパートに夫と暮らすサチ子は、隣りと隔てる壁の向こうから聞こえてくる男女の痴話喧嘩に耳を凝らす。そんな自分の姿に驚きもするのだが、たびたび聞こえてくる隣りの声に反応してゆく。

【2】『隣りの女』(下)(収録時間:約48分)
平凡な主婦・サチ子はいつしか隣りの女の相手だった麻田と恋に落ち、夫には谷川岳に行くといって、ニューヨークまで追う。一生に一度してみたかった恋だと、麻田と過ごしている間、日本の夫は隣りの女から、あれこれと吹き込まれ、逆に誘われるが…。平凡と円満に潜む、人間の性(さが)を描き尽くす。

【3】『胡桃の部屋』(収録時間:約64分)
三年前に父が家を出てから、桃子は職場の付き合いも断り、母、妹、弟の大黒柱として、女であることも忘れて獅子奮迅する。やがて父の居場所と相手の女を突き止める。女性としての幸福を求める気持ちの葛藤をねじ伏せて、父替わりの一家の主の役割を必死で演じていく先に桃子が見るものは…。

【4】『狛犬』(収録時間:約59分)
性格も風貌も職業もまったく対照的な二人の男、門倉修造と水田仙吉。三年ぶりに高松から東京へ帰ってくる仙吉の社宅を探して準備万端整えてやるのはいつも修造の役割であり、楽しみでもあった。仙吉の女房が”おめでた”だと判った時、修造は仙吉にもし女の子だったら俺にくれ、という……。

【5】『鮒』『ビリケン』(収録時間:約65分)
家族四人水入らずで暮らしているある日、台所の勝手口から誰かが鮒をバケツに入れて置いていった。それが誰であるかを知っているのは父だけだった……。(鮒)

【6】『三角波』『嘘つき卵』(収録時間:約63分)
結婚して数年たっても子供が出来ない佐知子は自分で検査を受け、正常と判った。夫に問いただすと夫は結婚前に女を身ごもらせたことがあるという……。(嘘つき卵)

【7】『かわうそ』『だらだら坂』(収録時間:約55分)
指先の煙草を落としてから一週間目、宅次は脳卒中の発作を起こす。その後の日常生活で起こる様々な出来事で、夫婦それぞれの思惑が錯綜してゆく……。(かわうそ)

【8】『はめ殺し窓』『三枚肉』(収録時間:約57分)
蚤の夫婦と呼ばれた両親を持つ江口は、娘が嫁ぎ、自分の母親に似てくるのを見ている。両親の生々しい記憶と現在が交錯して織りあげられる物語。(はめ殺し窓)

【9】『マンハッタン』『犬小屋』(収録時間:約56分)
妊娠したばかりの達子は電車の向かい側にいかにも動物園帰りといった感じの若い夫婦と男の子を眺めている。ふと気が付くとその父親は十年近く前に……。(犬小屋)

【10】『男眉』『大根の月』(収録時間:約56分)
結婚前に包丁研ぎのコツを話していた英子は、結婚して子供が生まれてからも三日に一度は研ぐ癖がついていた。ある日、台所に子供が飛び込んできて……。(大根の月)

【11】『りんごの皮』『酸っぱい家族』(収録時間:約56分)
死んだ鸚鵡を捨てよう、捨てなくてはと思いながらずるずる延ばしにした、その気持には覚えがあった。若い頃、貧しい陣内写真館の主人と出逢って……。(酸っぱい家族)

【12】『耳』『花の名前』(収録時間:約53分)
花の名前をろくに知らない夫に、花の名にちなんだような名前の愛人がいた、常子はそのバーのママという女に会い、その夜いつもの顔をして帰宅した夫に……。(花の名前)

【13】『ダウト』『子供たちの夜』(収録時間:約49分)
付き添いをしていた父が亡くなって、葬儀に塩沢は従弟の乃武夫を呼びたくはなかった。が、通夜の晩、勝手口に極上の寿司が二十人前届けられた……。(ダウト)

【14】『父の詫び状』『身体髪膚』『ごはん』(収録時間:約64分)
昭和二十二、三年頃、父が仙台支店に転勤になる。大勢の客の酒の肴をつくり、酔いつぶれた客の粗相をきれいにするを父は黙って見ていた……。(父の詫び状)


■仕様/CD14枚組
■別冊解説書付(40P)
■発行/日本音声保存